ブリテン管弦楽曲集 (管弦楽入門 他)　ラトル＝CBSO （CDC555394）

曲目・演奏者

●ブリテン：
[1] 青少年のための管弦楽入門 Op.34
[2]「カナダの謝肉祭」Op.19
[3] アメリカ序曲 Op.27
[4] イギリス民謡組曲「過ぎ去りし時…」Op.90
〔1. 美果と美酒，2. にがいヤギ，3. まぬけのハンキン，4. リスを追え，5. メルバーン卿〕
[5] シンフォニア ダ レクィエム

■サイモン・ラトル指揮 バーミンガム市so　[2]ウェズリー・ウォーレン(tp)　[4]ピーター・ウォルデン(ehr)

ディスク・データ

CD// 海外盤 {DDD} EMI＊CDC 5 55394 2
　発売：96年／録音：[2]1982, [3-5]84, [1]95年／収録時間：77分
△ブリティッシュ コンポーザー・シリーズ　△ディスク＝MADE IN THE UK

コンディション

◇ディスク：A-/ スリキズ少しあり / レーベル面中心部にスリキズ少しあり
◇ブックレット：B+/ 強いシワ部分的にあり / 白地部分に変色あり(軽め)
◇プラケース：交換　◇バック・インレイ白色部分に変色あり(軽め)

録音データ・その他

☆[1]1995. 1 バーミンガム・シンフォニー ホール，[2]1982. 4 チェルトナム・タウン ホール，[3-5]1984. 4 ウォーリック大学・バタワース ホールにおける録音。(P) [1]デイヴィッド・R マーレイ，[2-5]ジョン・ウィラン、(E) [1]マイク・クレメンツ，[2-5]マイク・シーディ。
−有名曲2曲の間に珍しい曲3曲が挟まれています。ブリテンは1939年 第二次大戦がはじまると兵役を拒否し、北米に渡りました。[2]「カナダの謝肉祭」は1939年 アメリカで書かれたもの。カナダのフランス系の4つの民謡を使っているとのことですが、祝典的な曲かと思いきや、どうも様子がおかしい。バックヤードからと思しきトランペットの静かな吹奏で始まり、最後に回帰して終わりますが、その間もコープランドを思わせるリズミックな面白さが聞かれるものの、静かでいやに暗い。しかも後半に「ひばり (アルエット)」という有名な民謡 (日本でも別の歌詞を付けて歌われています) でスカッと盛り上がる… かと思いきや、調子が狂った盛り上がりかた。この民謡の歌詞は「ひばりの頭の羽根をむしろう」という残酷なものとのことですが、ブリテンはこの歌詞を知っていて、お祭り風とは正反対の内容の音楽を書いたのではないでしょうか。3年半に及ぶ北米旅行は愛するピーター・ピアースを伴っていたこともあり 充実したものだったようですが、ホームシックにかかったこともあったとのこと。遠い異国で自由な身ながら、ヒトラーがヨーロッパを蹂躙していくニュ−スが、ブリテンの感情と創作活動に大きな影響を与えたとしても不思議ではありません。
−[3]は1941年 当時 クリーブランド管の音楽監督をつとめていたアルトゥール・ロジンスキの依頼に応えて作曲したもの。作品名は「オーケイショナル オーヴァーチュア (和訳すると ｢偶然序曲｣ ?)。ただ戦争期の混乱のせいか初演されず、しかもブリテンはイギリスに戻る時にこの曲の自筆譜をアメリカに残していってしまいました。作曲したことをすっかり忘れており、1946年 BBC放送のために書いた作品に 同じ名前を付ける始末。1972年 NY公立図書館に所蔵されていた自筆譜と約30年ぶりに対面し、｢アメリカ序曲」と名前を変えて、1983年 サイモン・ラトル指揮 バーミンガム市響によって初演されたのです。この録音は初録音でしょう。この曲にもコープランドの影響が聞かれるようです。
−[4]は1974年作曲のブリテン最後の管弦楽作品。ブリテンはその翌年 63歳で亡くなりました。パーシー・グレインジャーに捧げられた、イギリス民謡を扱った作品。副題はトマス・ハーディの詩「生まれる前と死んでから」からとられているとのこと。意味深長な副題にも表れているように、民謡を扱いながらもその素朴さや快活、あるいは懐かしさを表そうとしたものではなく、練られた複雑な筆致に、寂寥感や諦観が込められているよう。広く親しまれることを意識し、最後に盛り上がれるように などの構成になっておらず、最後も静かに消え入るように終わります。ブリテン晩年の心境や作風が現れた渋い名作といえるのではないでしょうか。
−なお[1,2]はこれが初出。[3-5]はオーケイショナル オーヴァーチュア Op.38 とのカップリングで発売されていたものです。