≪DVD≫ モーツァルト：フィガロの結婚　ベーム＝WP； ベリー(Bs) グリスト(S) 他 /L （TDBA0037・2枚組）

曲目・演奏者

●モーツァルト：
「フィガロの結婚」K.492 全曲

■ヴァルター・ベリー(Bs：フィガロ)　レリ・グリスト(S：スザンナ)　イングヴァール・ヴィクセル(Br：伯爵)　クレア・ワトソン(S：伯爵夫人)　エディット・マティス(S：ケルビーノ)　ゾルタン・ケレメン(Bs：バルトロ)　マルガレーテ・ベンツィ(MS：マルチェッリーナ)　デイヴィッド・ソー(T：バジーリオ)　ディードル・エイゼルフォード(S：バルバリーナ) 他
　カール・ベーム指揮 ウィーンpo　ウィーン国立歌劇場cho
□演出：ギュンター・レンネルト

ディスク・データ

DVD// 国内盤 [B&W] {MONO/ ADD} TDKコアーTDK＊TDBA-0037 (2枚組)
　発売：03年／定価：6090円／収録時間：180分 (片面2層)／信号方式：NTSC
　収録：1966年LIVE／画面：4: 3／音声：リニアPCM／字幕：日本語・伊語
△ライナーノート：G. クラウス (翻訳), 山崎浩太郎　△原盤：ORF

コンディション

◇ディスク：1)B+/ スリキズ部分的にあり(小さめ)，2)B+/ スリキズ少しあり(縦方向強めの長め含む＊動作確認済)
◇ブックレット：A-〜B+/ 小シワ少しあり(強め)
◇プラケース：B+　◇オビなし

収録データ・その他

☆1966. 8. 11 ザルツブルク小劇場におけるライヴ映像。(P) ヴァルフリート・シャイプ、(D) ヘルマン・ランスケ。
−1966年 ザルツブルク音楽祭におけるレンネルトの新演出上演をライヴ収録したもの。ベームはこの2年後の1968年にベルリン・ドイツ・オペラとDGにレコード録音をおこないますが、歌手はマティス以外はすべて異なっています (しかもマティスはケルビーノではなくスザンナ)。またベームはこの10年前の1956年 ウィーン響とPHILIPSにドイツ語版を録音していましたが、フィガロは当ライヴ映像と同様 ベリーでした。さらにベーム&WPは当ライヴ映像の10年後の1976年 ボネル演出の映像作品を制作しています。
−実は発売以来 見たかった映像ですが、今回初めて見ることができ、感激しました。オープニングのホーエンザルツブルク城の映像から、ザルツブルク劇場にいざなわれ、観客の様子、ベーム登場。これだけでもゾクゾクさせられました。ただしモノクロ映像でやや暗く、ベームの姿は見づらく、コンマスが誰かは全く見えないのは残念。舞台もやや暗かったり、多少のノイズが出たりするものの、オールドファンには音声とともに充分でしょう。−1966年ともなると、ザルツブルク音楽祭の歌手陣はウィーンの常連というわけではなく、国際的になっています。そんな中 フィガロはウィーンのヴェテラン ベリー。さすがの軽妙な歌と演技。レチタティーヴォのうまさには舌を巻きます。私はヘルマン・プライとともに最も好きなフィガロですので、映像が見られて感激です。−スザンナがアメリカ出身の黒人 グリスト (当時34歳) というのは意外な気がしましたが、調べてみますと 1960年代 ヨーロッパを飛び回って活躍していたようです。いかにもスーブレッドでコケティッシュな歌。内容空虚のコロラトゥーラではなく、感情がこもっています。そして華奢な体の愛らしさ、演技も見事。グリストの真価を聞くことができる、この映像作品の最大の見どころ・聞きどころではないでしょうか。−マティスも当然のように素晴らしいですが、ワトソンの伯爵夫人、ヴィクセルの伯爵がまた素晴らしい。ワトソンは第3幕の歌でソット ヴォーチェのテクニックを披露、盛んな拍手を受けています。一方 私はヴィクセルが好きではないのですが、この好演は意外でした。歌手の最大の欠点は裁判のシーンでクルツィオが思い切りずれることでしょうか。まさか吃音の演出の延長上ではないとは思いますが。
−音の限界がありながら、ベームの指揮の見事さもよくわかります。流麗ではなく、力強く確固たる指揮。1音1音噛みしめるようで 濃い。手紙の二重唱の最後の部分にもベームの意思のようなものを感じさせます。