クナッパーツブッシュ RRG放送用録音集 / ブルックナー, ブラームス, モツ, バッハ　WP, BP （TAH320・3CD）

曲目・演奏者

●[1] モーツァルト：｢アイネ クライネ ナハトムジーク」(セレナード第13番) K.525
[2] バッハ：ブランデンブルク協奏曲第3番ト長調 BWV.1048
[3]　同 ：管弦楽組曲第3番ニ長調 BWV.1068
[4]　同 ：ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調 BWV.1041　§
[5] ブルックナー：交響曲第4番「ロマンティック」 §
[6] ブラームス：交響曲第2番ニ長調 Op.73
[7]　同 ：　同　第3番ヘ長調 Op.90

■ハンス・クナッパーツブッシュ指揮　[1-4]ウィーンpo　[5-7]ベルリンpo　[4]ヴォルフガング・シュナイダーハン(vn)

ディスク・データ

CD// 海外盤 {MONO/ ADD} TAHRA＊TAH 320〜322 (3枚組)
　発売：98年／録音：[1]1940, [2-7]44年／収録時間：69+60+78分
△ディスク中心部の刻印＝DURECO FR (フランス)

コンディション

◇ディスク：1,3)A〜A-/ 小キズわずかにあり，2)A-〜B+/ スリキズ少しあり(強め / 動作確認済)
◇ブックレット：A-/ 中心部にプラケースのディスクホルダーのツメ咬み痕あり
◇プラケース：A-〜B+　◇バック・インレイ白地部分に軽い変色あり

録音データ・その他

☆[1]1940. 5. 12 ウィーンの放送局スタジオ，[2,3]1944. 6. 24，[4]1944. 7. 1 以上ウィーン・ムジークフェラインザール，[5]1944. 9. 8 バーデン- バーデン， [6]1944. 3. 26 ベルリン・マズーレンアレー放送局，[7]1944. 9. 9 バーデン- バーデンにおける すべて放送用録音。
−RRGが録音したクナッパ―ツフッシュ指揮の放送用録音を集めたもの。[1,2]はこの発売が初出だったとのことです。RRGとは国家放送協会。1925年にドイツで設立され、9つの地方放送局からなる放送網を統括していました。1933年にナチスによって国営化されましたが、1945年に解散したとのことです。現在 DRA (ドイツ放送アルヒーフ) が権利を持っていて、TAHARAがライセンスを取得し、原盤から復刻しているのでしょう。
−[5]についてコンテンツには「1878- 1880年稿」と書かれていますが、弟子たちが改訂を施した「第3稿 / 1888年稿 / 改訂版」の間違いでしょう。
−ナチス政権下 ドイツに残って演奏活動を続けていたクナ。しかしナチスに積極的に協力したというわけではなく、フルトヴェングラー同様 政治やイデオロギーには無頓着だったようです。戦後 アメリカによるドイツの非ナチ化によって受けた演奏禁止令は1年余りで解かれました。ワーグナーを得意としていたクナッパーツブッシュですが、ワーグナーを愛好したヒトラーはクナを嫌っていたとのこと。私はその理由を知りませんが、音楽性ではなく人間性が理由でしょうか?
−私も発売当時 このアルバムを購入しましたが、ひとえに珍しい [DISC-1] のモーツァルトとバッハを聞きたかったから。特に「アイネ クライネ」は終楽章で遅いテンポをとって暗さを聞かせてくれるクナらしい破格の演奏と感じていましたが、久しぶりに聞いてみると、これは逆にユーモアですね。後半のフレーズの終わりでやや大げさにリタルダンドし、ヴァイオリン部が可愛くしなを作るようなポルタメントを利かせるのを聞いて確信しました。ともかく低音、対旋律の強調や、フレーズの終わりのリタルダンドなど、丁寧に作りこまれた演奏です。またいかにも「ロマンツェ」的な第2楽章も美しい。これも遅めのテンポによる丁寧な作りで、重厚に鳴る低弦が効いています。そしてコーダに奏される主題のメロディは独奏ヴァイオリンで奏し、最後の低減の2音はピッツィカート。クナの遊び心がたまりません。しかもこれが戦時下の放送用録音ということに一層 感慨を深くします。−続く 恐ろしく重厚で柄の大きなバッハもここまでくると時代錯誤を超えて面白い。 [4]のシュナーダーハンのヴァイオリンも耽美的でロマンティシズムの極致。終楽章でのクナのエモーショナルな演奏がスゴイ。これらバッハが録音された 1944年6〜7月というと、東部戦線と西部戦線の両方でドイツ軍は敗北を重ね、苦境に立たされた時です。市民は詳しい戦況は知らされていませんでしたが、大戦初期のドイツだけ繁栄を謳歌していた状況とは異なっていることはひしひしと感じていたに違いありません。クナは何を思っていたことでしょう。この後 ドイツの都市は空爆に遭うなどし、翌年の敗戦・降伏へと突き進みます。